大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和39年(ワ)398号 判決 1967年4月27日

原告 三富廉平

被告 東武タクシー株式会社

右代表者代表取締役職務代行者 上代琢禅

右訴訟代理人弁護士 松本嘉市

同 浜田源治郎

被告 松田正利

右訴訟代理人弁護士 沼辺喜郎

主文

原告の被告らに対する株主権を有しないことの確認を求める訴は却下する。

原告の被告会社に対する株主名簿および株主台帳の名義の抹消を求める請求は、棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

原告は、「被告松田正利は、別紙株式目録記載の株式につき、株主権を有しないことを確認する。被告会社は、別紙株式目録記載の株式につき、被告松田正利が株主権を有しないことを確認しかつ、被告会社の株主名簿および株主台帳の被告松田正利名義を抹消せよ。訴訟費用は、被告らの負担とする。」との判決を求め請求原因として、次のとおり述べた。

「(一) 原告は被告会社の株主である。

(二) 被告らは、被告松田正利が昭和三七年二月二〇日頃訴外の者から別紙株式目録記載の被告会社株式を譲り受けたと称し、現に叙上の株式の株主であると主張している。また、被告会社の株主名簿および株主台帳には、被告松田正利が前述の株式を譲り受けその株主となった旨の記載がある。

(三) しかし、被告松田正利がこれらの株式を譲り受けた事実はない。

(四) よって、原告は被告らに対し、前述した別紙株式目録記載の株式につき株主権を有しないことの確認を、被告会社に対し、株主名簿および株主台帳の被告松田正利名義の抹消を求める。」

被告ら訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は、原告の負担とする。」

との判決を求め、答弁として、

「(一) 本訴は確認の利益を欠いている。

(二) 原告主張の請求原因事実のうち、(一)および(二)ならびに(三)のうち、被告会社の株主名簿および株主台帳に原告主張の記載があることは認めるが、その余の事実は否認する。」

と述べ、さらに、被告松田正利訴訟代理人は、

「被告松田正利は、別紙株式目録記載の株式を、昭和三七年二月一二日別紙譲受一覧表譲渡人欄記載の者からそれぞれ同株数欄記載の数の株式を同代金額欄記載の代金額で買い受けたものである。」

と付陳した。

理由

まず、被告松田正利に対する請求について判断する。

原告が被告会社の株主であることおよび被告松田正利が原告主張の株式につき、訴外者からその譲渡を受けて株主権を有する旨主張し、かつその譲渡にもとづき被告会社の株主名簿に株主として記載されていることは、被告松田正利において自白しているところである。しかしながら、株主は相手方との間で特定の株式の帰属を争う場合はともかくとして、他から株式の譲渡を受けて株主となったと称し、かつ、その株式につき株主名簿の名義書換をえた者に対し、その者が当該株式につき株主権を有しないことの確認を求める法律上の利益を有しないものといわなければならない。

したがって、原告の被告松田正利に対する本訴は不適法で却下を免れない。

次に、原告の被告会社に対する株主権不存在確認および株主名義抹消の請求について判断する。

原告が、被告会社の株主であることおよび被告会社の株主名簿に被告松田正利が原告主張の被告会社株式につき、他からその譲渡を受けた結果被告会社の株主である旨の記載があることは被告会社の認めるところである。しかし、株主はたとえ会社が自己の有する株式以外の株式につき真実株式の譲渡がないのに株主名簿の名義の書換をしたとしても、自己の株主権にもとづき、会社に対し直ちに当該株式の名義人が株主権を有しないことの確認を求める利益を有せず、また会社に対し株主名簿上の株主名義の抹消を求める請求権を有しないものと解するのを相当とする。

したがって、原告の被告会社に対する株主権不存在確認を求める訴は、不適法として却下すべくまた株主名義抹消の請求は、これを棄却するほかはない。

よって、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 服部高顕 裁判官 八木下巽 元木伸)

<以下省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例